もくもく雑記

雲のようにダラダラと

ゆらぎ荘の幽奈さん 24巻(最終巻) 感想

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ゆらぎ荘の幽奈さん24巻表紙

 

 

ネタバレ注意


本記事はゆらぎ荘最終巻である24巻のネタバレを含むため、未読の方はぜひご自身の目で結末を見届けてから本記事に帰ってきていただけますと幸いです。

 

 

カバーイラスト


ネームドヒロイン勢揃い。美麗&大迫力超ワイド。表紙と裏表紙が繋がってるカバー自体かなり稀な気がするけど、カバー折返しの部分までぶち抜いてるパターンは初めて見た。凛々愛と朝霞は初登場時の絵をそのまま使ってる?なんか見たことある気がする。割とよく出てきたキャラで登場してないのは芹となずなくらいかな?特に芹が載ってないのはちょっと意外。描き下ろしには登場しますけどね。白露蓮華様と如月姫沙羅様がいないのはご愛嬌。僕はどっちのキャラも好きなので登場したら飛び跳ねて喜びます。
これでゆらぎ荘コミックスの表紙は全て出揃い。最終巻はコガラシ君表紙だと思ってたけど、遂に出てこず。24巻全て女子onlyの表紙でしたね。

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ゆらぎ荘の幽奈さん22巻表紙より・この女子たち可愛いなあ

 

 

本編

改めて読んでもやっぱり面白い。僕がゆらぎ荘を他人に勧めるとしたら最終章を勧めると思う。ゆらぎ荘は全話面白いし、そこに至るまでの話があってこそ輝く最終章だとは思うけど、でもやっぱ1番を決めろと言われたら最終章なんだなあ。設定も練られているし、感動的。個人的には206話から207話にかけての幽奈さん(幻流斎さん)のモノローグが秀逸だと思います。論理立っていて時系列が分かりやすく、次々と幽奈さんの未練に関わる事実が明らかになっていくのが本誌で読んでてマジで面白かった。
謎解き的な面白さだけでなく、人情話としても秀逸。幽奈さんの葛藤・悲哀が読み手側の感情にガンガン訴えかけてくる。好き。
ゆらぎ荘最終章、謎解き的面白さと人間ドラマ的な面白さが一挙に味わえます。未読の方にはぜひオススメしたい。

 

 

GIGA読み切り


バカエロをしながらも、こゆずの成長やこゆずと日和さんの関係性にフォーカスを当てた名作回。こゆずが自身の覚悟を宣言した第31話『宮崎親子とこゆずちゃん』に対するアンサー回のような構成。
描き下ろしを読んだ後だとこゆずと日和さんの関係性に違った見方が生まれると思うので、既読の方も描き下ろしを読んだ後に再読することをオススメします!

 

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ゆらぎ荘の幽奈さん4巻第31話より・決意するこゆず

 

 

皆のその後 ~ゆらぎ荘 after hours~


各キャラのその後のエピソード(場合により登場前のエピソード)と詳細なプロフィールが掲載。ファンブック的な役割も果たしている感じかな。ファン必携やで!!

まず初っ端、幽奈さんのページで幽奈さん・仲居さん・こゆず・ミリアが出てくるのが良い。幽奈さんと仲居さんは加齢による見た目の変化がないし、こゆずとミリアは千紗希の修学旅行編で大人になった姿が公開されているので、未来といえども読者にとってはどこか見慣れた景色。ところがページをめくると修学旅行編とは雰囲気が違う大人千紗希や未公開の大人狭霧が出てくる。ギャップでいい感じにうおっ!?となる。構成が上手い!
ちなみに未来の容姿だと個人的には千紗希、狭霧、凛々愛あたりがすごい好み。特に凛々愛の破壊力がヤバい。ミウラ先生、普段は高校生くらいの年代のキャラクターを描くことが多いんだろうけど、大人キャラを描かせてもすごい。めちゃくちゃ魅力的。
他に構成が上手いと思ったのは千紗希関連の話。一旦読者を安堵させておいて、その後叩き落としてくる。普通逆でしょ笑!!千紗希のページ終わってたから完全に油断してた。1キャラ1ストーリーなどという枠組みにとらわれず、キャラ間を跨いでストーリーを展開するのが面白い。
多分、後にも先にもキャラブック的なものに対して「構成が上手い」なんて感想が出てくることないだろうな笑。通しで見ることによって展開が生まれるキャラブック…やばい!!

個人的に意外だったのはゆらぎ荘キャラの過去話。普段のコメディ話からは想像もできないくらい暗い話が多い!夜々とかこゆずとか芹とか。朝霞のお家事情も暗いってほどじゃないけどナーバスな感じ。修学旅行編とか幽奈さんの未練の話とかを鑑みるに、ミウラ先生は女子の顔を曇らせるのが好きなのかもしれないな。キャラの暗い過去を元々設定として練っていたんだとしたら、連載中は理性で曇らせたい欲求を抑えていたりしてたんだろうか?修学旅行編とかは忍ぶれど色に出にけりミウラ先生の性癖って感じなのかもしれない。そう思えばちょっとは明るく見れるかも(見れない)。
その一方で、未来の話はけっこう明るい。良かった。誅魔忍として生きていくことを決意した狭霧は格好良いし、後進の育成に尽力する雲雀も格好良い。「そうしてかるらは、魔王になった」は格好良いはずなんだけど笑ってしまう。マトラのページも合わせて読むに暗いストーリーもあったっぽいけど笑いが勝る。てか宵ノ坂と緋扇の対立も結構面白そうなんだよな。特にバトルアクション的な方面じゃなくて、政治的な方面で。

未来での恋愛事情。朧さんのページがめちゃくちゃ良い。そうくるかー笑。この二人の回は本誌で読んでてもめちゃくちゃ好きだったんだよな。嬉しい。
あとは兵藤と芹の関係。芹ページの兵藤評を読むと「たしかに兵藤って良いところあるよな」ってなるし(初登場時とか)、兵藤ページを読むと「たしかに兵藤ってこういうクズ発言しそうだな」ってなる笑。あと酌人が強くなりすぎた狭霧に冷めたっていうのも、めちゃくちゃありそうで笑った。「うわー、このキャラはたしかにこういう言動しそう」っていう感情は、キャラクターが読者の中にも息づいているからこそ発露するものであって、そういう魅力的なキャラをたくさん生み出せたミウラ先生はやはり凄いなと思います。ちょっと話が脱線したけど兵藤と芹の今後も見てみたいんじゃあ!!

んで最後はコガラシ君のページ。最後の「生涯を幽奈と共に暮らす。」という一文でいろいろな事を考えてしまった。二人の間に子供はできたのかなとか、コガラシ君が死ぬ時に幽奈さんも一緒に成仏したのかなとか、コガラシ君が死ぬ間際の二人って傍から見るとおじいさんと少女なんだよなとか。色んな巨大感情が渦巻いて、なんか知らんけど泣きそうになった。色んな苦難がこの先二人を待ち受けているんだろうけど、でもきっと二人は幸せな時間を過ごすんだと思います。幽奈さん、コガラシ君、本当におめでとうございます。

以上、 after hours を読んで思い浮かんだことをとりとめもなく書いてみた。この after hours だけでも笑いあり、シリアスあり、細かい芸ありとミウラ先生の良さが存分に出てる。ボリュームもめちゃくちゃあるし、ファンとしては感無量…。でも玄士郎が一番の巨乳という情報は要らなかった…。

 

 

あとがき


はぁ………好き。ミウラ先生の作家性が全て詰まってる。淡々とした語り口から溢れ出る知性とキャラクター愛。感動的。たとえ after hours が無かったとしてもこのあとがきだけで個人的には全然元取れる。ゆらぎ荘既読未読に関わらず本当に名文なので皆さん読んでください。人生で見てきたあとがきの中でダントツで良い…。私が文部科学省の大臣なら国語か道徳の教科書に掲載させます。

そして何よりあとがきの隣にあるイラスト。リラックスした様子で温泉に浸かるコガラシ君と幽奈さん。本作はエッチなハプニングが起きると女の子が赤面して、それが元で炎上したりもしたんだけど、最後がこれ。二人で裸で温泉に浸かっているのに、全く恥ずかしがる様子がない。もちろん、二人でお風呂に入るなんて恋愛の終着点、夫婦となった二人としてはありふれた描写なのかもしれないけど、エロコメのゆらぎ荘でやると全然違った意味を持つようになる。幾度も恥ずかしがる二人を描写してきたからこそ、そこに重みが生まれる。エロコメの究極形を見せられた気分。ヤバい。描き下ろしだけで何度も心を揺り動かされる…。最高だ…。

 

 

おわりに


ゆらぎ荘は大学に入学するちょっと前に始まって、卒業したちょっと後に終わったので、僕の大学生活はゆらぎ荘に支えられたと言っても過言ではないです。授業ダリー!サボりてー!って時も、今ミウラ先生が読者に向けて必死で原稿を書いてるんだよなと思うと、たかが授業くらいサボってる場合じゃない!!と奮起できました。おかげで自発的に授業をサボった回数は0回です(ごめんなさい、数回寝ブッチはしました)。
正直、最初連載が始まったときは「また凡百のエロコメが始まったなあ」くらいの気持ちだったんだけど、読み進めるうちにキャラクターの可愛さとか、ヒロイン同士でバチバチにやり合う恋愛模様とか、お手本のような話の構成の上手さとか、緻密に練られた感動的な長編とか、起こった事象に対して何でもかんでも理由付けしようとするミウラ先生の性格笑といった魅力にどんどん引き込まれていきました。あと、ギャグセンスも抜群だったと思います。エロによるギャグのブーストがある&ジャンプ本誌にギャグ漫画が無い時代が長かったというのもあってフェアな評価ではないかもしれないけど、けっこうな週でゆらぎ荘が一番笑えたなあ。特にパンツの呪い回と豪傑化回、あれは面白すぎるでしょ。豪傑化回は面白いだけでなく幽奈さんの心の機微を描写するという構成力も本当に素晴らしくて……(話が脱線していく……)。
本当に良いところを挙げ出すとキリがない。名作。凡百のエロコメと思っていた自分を殴りたい。『ゆらぎ荘の幽奈さん』という素晴らしい作品を最初から最後まで追えたことを、本当に幸せに思います。

ミウラ先生、4年を超える連載、本当にお疲れさまでした。最後の最後の最終章までワクワクする展開で綺麗にまとめ上げたのは本当に凄いことだと思います。他の人がなんと言おうと、僕はゆらぎ荘がジャンプで一番面白い漫画だったと思っています!本当に本当にゆらぎ荘を読めて幸せでした!ありがとうございました!!!